2012年度の体制

短くみれば2008年9月の東筑英語教室創設より3年半、長く見ればローディS青年がS少年だったころから7-8年、現代にあるべき至高の学習機会を確立する実験が、ついに完成したような気がしつつ更新した2012年度版のわが教室コンセプトPDF:

A4一枚で語るうちの設計思想
 http://tels.sakura.ne.jp/concept.pdf

もろもろ詳しい公式ウェブサイト
 http://tels.sakura.ne.jp/

3点で語れば
 ・一対一個別指導
 ・対話、問答、表現の作業で頭をこき使う
 ・読み書き音声三位一体学習


理系高校生はこれで精鋭となれ!

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120ミニッツあればイナフ~ベロうにゃは来年度も不滅です~

先週、センター試験までの一ヶ月でリスニングを改善したいがそんなことは出来るかと問い合わせがありました。
恥ずかしがらずにベロをうにゃうにゃやるんなら2時間くらいでいけるんでなーい?、と答えて、一回でやるといっぱいしゃべることになって疲れるから60分×2回という編成で音声演習(耳ではなく舌を鍛える)を実施したんですが、最終回となった今日、その高3生はあまりの効果に感激して帰りました。

舌を鍛えるとあっさり聞こえは変わります。人間は言語音声を耳じゃなく舌で聴いているとでもいうのか、音声知覚の運動理論(motor theory of speech perception)というやつです。うちの音声演習は、<音素の設計図すなわち筋肉制御のありかたを脳に体験させる>という基本思想で設計してあります。

演習の手順は、1 学習者は、スクリプトを見ながら音源を聞く、2 学習者は、そんな音になるのか、と違和感を覚えた箇所(たくさん)に印をつける、3 指導者は、印のついた音声列の集合をみて、学習者の脳内に設計図が欠けている音素を割り出す、4 その音素を発する練習する、5 音素が音声列の中に組み込まれたときに生じる変化を練習する、6 もう一度音源を聴く、という単純なもの。

Placeofarticulation
こうやって、音の発し方を、舌を口の中でどう制御するか、息を何回吐くか、息を吐くタイミングは唇やアゴの制御に対していつであるか、音程上昇や強勢はいつ生み出すか、といった筋肉制御の問題として説明する。

今回の学習者がいちばん面白がっていたのは、/r/ や二重母音を身につけるときの練習で、

・poooooo と長く言え、もう一回 pooooo という途中でベロをうにゃっと持ち上げてすぐ下げろ、舌先はどこにも触れるな、こう、こう、したら pro になる、一回目になくて二回目にあった響きが /r/

とか

・skeeeeeeed とまずいえ、もう一回 skeeeeeeed といえ、そのとき、途中でベロをこんなかんじでうにゃっとしたら scared になる、このように二重母音は一回の息の中で口の中の配置だけ義理っぽくうにょうにょっと変えるけど音は出さない、そんで響きがたるむ

とか、上の写真のように、お手元白板で口中ベロうにゃ解説を加えつつ、ばっときてぴゅーと訓練していたときでした。音が、流れの中で自動的に生じるもので、言うものではない場合があるということが面白かったらしい。たしかに、日本語には、一音のうちに推移が含まれる音節がないですからねえ。

かように効果覿面なわが教室の音声演習なのですが、伝わる人には伝わる気がするので、今回の学習者が二回のベロうにゃ特訓で実習した音素および音声列を示しておきます:

/t/ /l/ /n/ /s/ /ʃ/ /θ/ → glottal stop →(日本語で)<あ>から<う>に母音が推移していくしくみ、<い>から<う>に母音が推移していくしくみ→ (日本語で)円唇と奥舌の連動性 → /r/ (ghosts or spirits) → 二重母音、三重母音(our, sour, tower, fire, scared) → /ʌ/ /ə/ → p/b/m で唇を閉じてしまうことで隣接音素にでる影響(drop on my head; sat up and was shocked; at about eleven p.m.; a button at my head) → while she における le のあつかい→ 流れの中でただの時間になる音 (on the sofa; fall off of my head; saw the bathroom; in the coin holder in our car)

音声学に理解のある人なら、この段取りが意味するところは読み取れるはずです。実行できる指導者にはどんどんやっていただきたい。
なによりも数学をやらないと人材水準を確保できないこのご時世に、修行段階にある若い衆が英語学習に膨大な時間を奪われるのはけしからんことです。数学・理科はほとんどの人にとっては暗記科目ですから、これからの若い人は理数科目の学習時間を多くとれなければ、将来ぼろぞーきんみたいに使われるばっかりの労働力にしかなれない。そんな結末しかない学習は戦略として無意味でしょ。英語なんかちゃっとやってぱっと済ませるべき。ちゃんとやればそんなに時間はとられないはず。

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読み書き音声三位一体でやれば要らないかなと思っていたけれども、こうしてみると、音声のみの演習プランも残しておいた方がいいような気がしてきたので、来年度の大幅改編後も、ベロうにゃ特訓のプランはたぶん残します。

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新しいカンバン

kanban 名詞 〔経営〕
1 かんばん方式 《トヨタ自動車が開発・採用した在庫圧縮を目的とした生産管理方式; 後工程が ‘かんばん' (指図票) で示すだけの量の材料・部品を指定された時に前工程が納入する; cf. JUST-IN-TIME》.
2 かんばん方式で用いられる作業指図票.

と、研究社の『ビジネス英和辞典』にあるとおり、看板は英語語彙に入っています。
新聞レベル(つまりたいして専門性のない文章ってこと)でもよく出てくる、日本語からの<輸出語>はいろいろあります。いくつか意外性のあるのを挙げると、tankan (日銀短観)、keiretsu (系列。[銀行が頂点に立って企業の結合を組織化している、いわゆる<日本型経営>の根本原理であり、よそからは、日本市場の閉鎖性の元凶であるとみなされているもの])、tycoon (大君。もとは徳川将軍のこと。今では実業界の大物を指す)、などがあります。
futon, haiku, tanka, renga (連歌), ninja, samurai, anime といった文化方面のもの(?)が外国語になっていることは有名でしょう。
anime はそもそも外国語じゃないのかって?とんでもない、完全に日本語です。
animation は ani-ma-tion という3音節、あいまい母音を雑にやれば ani-mation の2音節なので、どうやっても英語音声の頭からは anime という略語は生まれません。実際、オックスフォードの英英辞典で anime を調べると: "Japanese film/movie and television animation, often with a science fiction subject" と説明してあったりします。「たいていSFだ」というつっこみが素敵ですね。
animation → あにめ → anime の流れとちがい、はじめからしっかり英語音声規則どおりの語彙でできているのだけれども、実は日本で始まった表現だという英語語彙としては、日本のレコード会社がピンクフロイドの音楽性を言い表すために、売り文句として「ピンク・フロイドの道はプログレッシヴ・ロックの道なり!」とのたまい、そのときはカタカナで書いてあったんだけれども、なるほどいいねそれってことで世界中で使われるようになった progressive rock という語彙があります。ロックの中でも実験性・芸術性を目指すカテゴリのことで、最近の若い衆はこれを prog rock はては prog と略すようです。日本語圏ではふつうプログレと略しますね。

<それはよろしいのですが>

うちの教室がはじまったのは2008年9月1日。ちょっとまえに満三年となったのでした。この三年で、やっぱり地方に来ると若い衆の事情も全然違うな、こいつら2020年以降の世界では絶対生き残れねーな、ということで、地方の若い衆(高校1-2年生)のあーまーりーにーもー低い出発点でも、本人が気力を持って1年とりくめば現代人としてまともな技能水準まで成長できるプログラムを設計しようと、あれこれ工夫を重ねるうちに、うちの学習内容がすっかり変わってきました。創設時につくったカンバンの雰囲気が、今や教室内の現実と合わなくなってしまいました。ということで、カンバンをつくりなおしたのです。

注:2020年ごろの世界では、工場や農場で猛烈に進んできた人手を省く技術が、オフィス環境にも及び、事務職の大部分が消滅します。マイクロソフトが、革新的発明がなくても現存のIT技術を突き詰めるだけでこうなるという、10年後のオフィスを予想した動画を作成して公開しているので、若い人は見ておくとよろしい: Productivity Future Vision 2011 by Microsoft

これが看板屋さん(ナカムラ工房様)が事前にくれたデザイン画像:

2011kanban

これが今日、門前にかかりました。実物はこの画像以上になめらかぁでやわらかぁくてさわやかぁなかんじです。

この3年でいちばん大きな変化は、看板にあるとおり、読み書き音声三位一体学習を確立できた点です。もはや読解力、作文力(英文発想力)、音声という、英語技能の三領域を分けて鍛える必要はなーい。明確に言えば2010年10月に、ひとつの文章教材(たとえばリンガメタリカとかカガク英語ドリルとか)を使って、それを読む作業の流れに、かく、きく、いう、のトレーニングをなめらかに混ぜる方法を確立できたのです。
これには<語彙語彙連合づくり>という読解演習法を確立できたことが大きな要因となりました。<語彙語彙連合づくり>のおかげで、音声トレーニングの第一段階で行なうべき<句のリズムを体に叩き込む>という作業が、読解演習と連動しやすくなった。初級段階の学習から文法知識を排除しやすくなったんですなあ。

読み書き音声三位一体学習の段取りを大まかに示すとこんな段取り:

1 超速音を聞く
2 句切り音を聞く
3 一句ずつ意味を把握する。未知語彙は<語彙語彙連合>していく
4 一段落読めたら要旨を日本文で書く
5 それを英文になおす
6 その英文を音読する(学習者が読む)
7 音のまずいところを、まずはリズム(何拍であるか、どこが強いか)の問題として矯正する。ある程度できてる人には調音(その音はどうやって出すのか)の問題として練習する。
8 次の段落へ

すえひろがりで8段階に分けて記述してみました。まあ音声の6,7は本人が希望しなければしません。たしかに、音声での英語議論力を将来必要とする人は、実はさほど多くないでしょうから。しかし、書き手の国籍問わず重要な研究報告や論文はたいてい英文なので、知識人が務まるためには、先進的専門知をやりとりするための英文読み書き力は必須です。なので、本人がそこはまだいらないというなら、6、7は省略してもよろしいですが、1-5の省略は絶対に認められません。そこで楽をしたがるやつは、ワタクシの時間を奪うにふさわしくない無気力生物と見なされ、破門となります。

うちはそんなかんじの学習機会です。

<語彙語彙連合とはなにか>

それを説明した記事があるのでそっち読んでください:
 http://emptybrigade.txt-nifty.com/blog/2010/09/post-23f7.html

プログレの語源

わが畏友渡仲幸利の著書『新しいデカルト』

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ボランティアニット2011

ゆえあっておちおち寝てられず、めずらしく早朝から起きていたら、朝8時ごろ、紅茶党党友Yさまからなんぞ写真の添付されたメールが。

「ボランティアニットができました」

おおう、もう11月か。

ボランティアニットというのは日本編物文化協会とMS&ADゆにぞんスマイルクラブとの共催で、日本から手編みマフラ、セータなどを、防寒着の足りない貧困地域の子供たちに届けるというボランティア事業です。毎年11月が手編み作品の募集期間となっているので、この事業に参画する手芸者の皆さんは一年かけて、あったかい作品を仕上げていかれるのであります(補足:初心者の方には最寄の編物教室を紹介してもらえるそうなので、編物マイスターでなくても参画できます)。
Yさまは昨年度からこの事業に参加しておられ、それを聞いたワタクシは、自分では編物が出来ないので、あったかそうで頑丈そうな糸を探してきてYさまにお渡しし、間接的貢献に努めていると、まあそういうわけなのです。

糸提供ワタクシ、作成Yさまのセーターはこのふたつ。どっちもぬくそう。

Volunteerknit2011aVolunteerknit2011c

編物については毎度言ってますが、なんであのひょろながい糸玉が、棒数本つかうだけでこう化けるのか…手芸者おそるべし。
今回、面映ゆいことに、不肖ワタクシ名義で贈っていただけることになりました。

近くで見ると深い色をしているのね。
Volunteerknit2011b

わが在所北九州市は、当該年度に健康保険料完納かつ病院に一度もかからなかった人に粗品をくれたりするんですが、それをもらっている無病息災超人のワタクシ名義のセータを着る子なら風邪など引かないに違いない。

Yさまの説明によると、赤いのはガーンジーセーター、青いのはアランセーターといい、いずれも漁師たちが波風に耐えるために編み出した伝統衣料で、防寒力にすぐれるのはもちろん、航海の無事をいのったり漁の成功をいのったりする意味をこめた紋様を編みこむところに特徴があるのだとか。赤いのに編みこまれている精緻な意匠は、Tree of life と呼ばれる、生命の栄えを願う模様、青いのの袖に刻まれている波波は、Link を意味する模様なんだそうです。うむ、なんと象徴主義的なセーターか。
美に仕える者として、そのお心を四行詩に結晶化しておかないわけにはいかない。

これを着る子らの健康を祈って:

Knitted affection's here arrived.
North winds howling all be blocked.
In the woods, the birds take off,
Through the boughs of the tree of life.

(吠える北風はねかえす
 ぬくもりニットのご到着
 鳥はいつしか生命の
 森のこずえを超えてゆく)

sung: volunteerknit2011.merry.mp3

read: volunteerknit2011.placid.mp3

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ボランティアニットは毎年募集されます。2011年度の作品募集期間は11月1日~11月7日なので、今知ったというひとが今年度分を準備することは不可能ですが、来年もまたありますので、手芸をたしなむ方はご一考を。

<ボランティアニットの募集要項はこちら>

 「手作りタウン」による説明
   http://www.tezukuritown.com/smile/recruit.html

 「日本編物文化協会」による説明
   http://www.nac-web.org/event-01-volun.html

 

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理系英語には理系英語の文章作法がある

理系の英語と文系の英語はちがうもので、時代の要請が理系英語の方に傾いているのはすでに自明です。何年か前から、東京外国語大学のような語学・地域研究を本分とする文系単科大学の入試で、ひんぱんに理系トピックの英文が出題されていることにも、その趨勢は反映されています。
というわけで、高校生のうちに理系英語よみかきの発想に親しむための学習プランを整えました:

■理系英文読解入門
 (自然科学語彙と論理的進行になじむ)

 ウェブサイトの詳細ページ
   http://tels.sakura.ne.jp/scientificterms.htm

教材は『カガク英語ドリル』

■理系英作文の心得を知ろう
 (科学技術分野の作文における7つの基本姿勢を練る)

 ウェブサイトの詳細ページ
   http://tels.sakura.ne.jp/technicalwriting.htm

教材は The Elements of Technical Writing

理系高校生諸君、寿命120年時代を生き抜ける思考と表現の土台を練成しましょう。普遍的で論理的で明晰なやつを。若いうちにしか出来ないことだよ。

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小3~高2:5つのエントリープランについて

春休み期間に、高校生生徒からの要望に端を発して導入されたエントリープラン「和英筆力マスター」が予想を上回る広範な学習効果をもつことがわかったので、これの中学生版を考案、中学生向けエントリープランとして採用することにしました。題して:

ロジカル英作文入門
 公式ウェブサイトでの説明はこちら

この変更に伴い、東筑英語教室のエントリープランはこのような編成となりました:

・小学生さきどり英文法(小学生。ゼロからの導入)
・ロジカル英作文入門(中学生。論理的思考と和英の論述力)
・熟読リンガメタリカ(高校生。英文読解力の基礎完成と伸びしろ開拓)
・和英筆力マスター(高校生。和英双方の論述力)
・理系英文読解入門(高校生。『カガク英語ドリル』で理系英文読解)

くわしくは公式ウェブサイトでごらんください
 http://tels.sakura.ne.jp/index.htm

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言語音楽頂上対決

英詩史上最も音楽的に美しいといわれる幻視者ブレイクの The Tyger と、英詩史上最高の韻律職人にして改作修正(revision)の多いことで知られるテニスンがめずらしく一度も手直しの必要を感じなかったという The splendour falls on castle walls... と。言語音楽として美しさにまさるのはどちらなのか。

これはワタクシが迷い続けている謎の一つですが、昨日今日とその二作を録音し、聴き比べてみたらば、ますます謎がふかまってきました。どっちも美しい。

ブレイクは生命を歌う
 thetyger.mp3

The Tyger
 William Blake

Tyger Tyger, burning bright,
In the forests of the night;
What immortal hand or eye,
Could frame thy fearful symmetry?

In what distant deeps or skies,
Burnt the fire of thine eyes?
On what wings dare he aspire?
What the hand, dare seize the fire?

And what shoulder, & what art,
Could twist the sinews of thy heart?
And when thy heart began to beat,
What dread hand? & what dread feet?

What the hammer? what the chain,
In what furnace was thy brain?
What the anvil? what dread grasp,
Dare its deadly terrors clasp?

When the stars threw down their spears
And water'd heaven with their tears:
Did he smile his work to see?
Did he who made the Lamb make thee?

Tyger Tyger, burning bright,
In the forests of the night;
What immortal hand or eye,
Dare frame thy fearful symmetry?

テニスンは天地を奏でる
 thesplendourfallsoncastlewalls.mp3

The splendour falls on castle walls...
 Alfred Tennyson

The splendour falls on castle walls
And snowy summits old in story:
The long light shakes across the lakes,
And the wild cataract leaps in glory.
Blow, bugle, blow, set the wild echoes flying,
Blow, bugle; answer, echoes, dying, dying, dying.

O hark, O hear! how thin and clear,
And thinner, clearer, farther going!
O sweet and far from cliff and scar
The horns of Elfland faintly blowing!
Blow, let us hear the purple glens replying:
Blow, bugle; answer, echoes, dying, dying, dying.

O love, they die in yon rich sky,
They faint on hill or field or river:
Our echoes roll from soul to soul,
And grow for ever and for ever.
Blow, bugle, blow, set the wild echoes flying,
And answer, echoes, answer, dying, dying, dying.

とにかくあれですよ、言語がリズムを際立たせたときに生じる魔力/魅力ってものがあるわけですよ。このふたりはそれを産み出す達人であるわけですが、前者は死んだ弟の霊と会話しちゃうようなエキセントリックな創造者で、後者は既存のいろいろな韻律を練習して身につけた上で自らの詩境を開拓していった科学好きの詩作職人だというのが、面白い。なにをやっているかということと、なにをやっているつもりでいるかということの間には、なんの関係もないってことよね。剣呑剣呑。

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新プラン「和英筆力マスター」

4月からとうとう大学受験年度を迎える高校2年生から、小論文の力を鍛えたいという相談があり、それを受けて一計を案じ、去る3月18日から実施してきた学習が、予想以上に学習者に効果と愉快をもたらすものであることが判明したので、高校生向けエントリープランのひとつとして常設することとしました。

和英筆力マスターというものです。詳細は公式ウェブサイトで説明しております:

和英筆力マスターの目標・効果・手順
 http://tels.sakura.ne.jp/writingmaster.htm

高校生学習者の要望から生まれたプランといえる和英筆力マスターですが、その雛形となった3/18日以来の学習の段取りを大まかに示すとこんなぐあいです:

0. 学習者の志望学部学科に関連する領域の日本語文章を選ぶ。このとき読んだのは、西平直「出自とアイデンティティ」(東京大学出版会『UP』2010年7月号)というもの。人工授精という生殖補助医療によって誕生した人たちが、長じて後、その事実を知ったあと抱え続ける葛藤を吐露し共苦する当事者たちの会合に参加した教育学者の報告記事。

1. 学習者とワタクシ、ふたりがかりで質疑応答・議論・意見交換・資料参照をまじえながら、一段落ずつ対象和文を読み込み、徹底して納得する。

2. 学習者に、対象文を理解した上で、人工授精という技術の利用に対し賛成か反対の立場をとり、その立場を表明する小論文を作成してもらう。その下準備として:

A:人工授精に賛成である/反対である(結論・主題の提示)
B:その理由/読者に判断材料を提供(結論・主題の展開)
A':ゆえに、人工授精に賛成である/反対である(結論・主題の再現)

という進行の各区分にもりこむべき情報・図式・用語などを箇条書きで表にさせる。ワタクシは横から手元をのぞきながら、整合性がとれるよう再検討や発想をうながす。

3. この進行表に従い、600-800字の小論文を作成する。その途上、書き手である学習者は気になったことがあれば質問してよい。辞書など、手元資料は活用してよい。このとき、400字詰め原稿用紙を提供し、自分のすでに書き進んだ分量を意識して調整しながら作文を行なうよう促した。

4. できた小論文をいっしょに読んでみる。その途上、ワタクシの気になった点や不明瞭な点については、書き手本人である学習者にその意図を問いただす。学習者自身が修正や改善のアイディアを得た場合はすぐさま申告してもらい、現状とどちらのほうがすぐれているか検討する。こんな具合で原稿を練り上げてゆき、小論文の完成度をつきつめる。

5. 出来上がった小論文を、1センテンスずつ英文に訳していく。その際、まずは学習者自身の発想を示してもらい、なるべくその構造を活かせるように修正のヒントをワタクシが出していく。

という流れでした。拙速は無、という基本姿勢でゆっくり、じっくり進めていくうちに、日本語も英語も独善に陥らない重厚な論述作業が体験されていきます。まさに和英筆力マスター。

今回の変更で、高校生向けエントリープランの構成はこうなりました:

熟読リンガメタリカ(英文読解力の基礎完成と伸びしろ開拓)
和英筆力マスター(日本語小論文・英作文の構想力・表現力)
理系英文読解入門(自然科学分野の英文読解力)

時間の余裕は心の余裕。高校1,2年のうちに本物の知性を鍛えておきましょう。

公式ウェブサイト
 http://tels.sakura.ne.jp/index.htm

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英英辞書を活かして英作文のトレーニングをしよう

英英辞書を活かして語彙語彙連合をつくろう、という読解と受容語彙の学習法はすでにこのブログでもご紹介したことがありますが(こちらがその記事です)、このほど、英英辞書を活かして英作文のトレーニングをする、という学習法についても、当教室の生徒の実践によりその効果のほどに確信が得られてきたので、これもそろそろご紹介しておきましょう。

■英英辞書を活かして英作文の練習をしよう

人間の言語とのかかわりには受動的立場(きく・よむ)と能動的立場(はなす・かく)の区別がありえますが、それぞれの立場で、使用可能な語彙力は異なってきます。前者の立場で使える語彙を受容語彙(passive vocabulary)、後者を発表語彙(active/productive vocabulary)といいます。そしてどんな人でも後者のほうが規模が小さい。とくに、読む学習ばかりしていることが多い日本人学習者は、音声を取り扱えない上に、発表語彙の改善を怠っているために、それなりに学術的な英文くらい読めるような人でも、作文の質はあまりに子供じみていることが多い。実務の世界でも学芸の世界でも、意味のある重要情報は音声でなく文字で流通しているのが現実なので、音声のトレーニングを書き言葉の学習より後回しにするのはよいにしても、作文ができないというのでは実用性の領域にたどりつく英語学習をしているとはいえず、徒労といわざるを得ません。
作文技能を向上させるもっとも効率的なポイントは、発表語彙の洗練をめざしてトレーニングを行なうことです。
これを、日本人学習者が最も得意としている(?)長文読解のトレーニングと絡めて行なえれば、いっそう効率的となります。そのためには、次のような手順でトレーニングを継続してゆくとよいでしょう。これなら独習も可能なはず:

1:英英辞書を使いながら長文読解をする

2:読み終えたら、その英文の中から、5つほど(別にいくつでもよいが、これより少ないと連想効果が得られにくくなって、記憶への定着が弱くなる)、自分の発表語彙力に採り入れたい語彙を選ぶ。

3:その5つの語彙項目(lexical items)を用いて作文を試みる。標的項目は、それぞれ、ばらばらに作文する。そのとき、短文を一個作るよりも、二人の人の対話を構想してみると、記憶の定着が容易になりやすい。例を示す:

coincidence を採りいれたい→「こんなところで会うとは奇遇だな」という話なら coincidence を使えるんじゃないか、と考える→ "What a coincidence (it is to see you here)!" "It is not a coincidence, because I am always stalking you, my love" "..."

4:もし、標的語彙を含みいれられそうな話を思いつかないときは、英英辞書に出ている例文を改作してみるか、その文の前後の状況を想像してみて、点景的な記述を作ってみるとよい。状況を意識できれば語彙は採れる。例:

stalk → The lion was stalking a zebra. (OALD例文)。

a) The love hunter jokingly said, "I am always stalking you." (S be stalking sth の構造のまま改作)
b) One of the zebras got separated from the flock, and a lion found it and started to stalk it. (状況を想像してみた)

辞書はOALD、高校生でも読める良質な素材英文はリンガメタリカ、でしょう。

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春呼ぶニット

あれは11月3日のことでした。
ワタクシがボランティアニットなる事業の存在を知り、編み物上手の紅茶党党友Yさまに材料をささげることで来年度分のボランティアニット作品を作ってもらおうと、生まれて初めて、なんの予備知識も準備せずに手芸店に突入し、すったもんだしたあげくボランティアニットの規定から外れる毛糸を選んでしまったという、「糸違い事件」のことです。
くわしい顛末は以前の記事「手芸の世界は奥が深い」や「fingerless mitt との遭遇」にあります。

ワタクシがYさまにお届けした「まちがった糸」は、Yさまのご家庭で活用していただけることになっていたのですが、なんと、早くもそれが形になったというお知らせが。

20101204vestthespringbringer

おおおお、あのぐるぐるまきの糸の玉10個がこうなるのか…しかもまんなかがうねうね!…いったいなにをどうしたらあのただの糸がこんな姿に…おそるべし手芸の世界。
美術の世界で、最近、初期ルネサンス画家を連想させるところのある写実的な造型の画法をあらためて練り上げた20世紀の職人的作家モランディの人気がとても高くなっているとかいう話ですが、やはりまっさらの材料から人間が手指だけでつくりあげたかたちには、独特の味わいが漂っています。かろやかなすごみ、すきとおったまま満ち足りている存在感、とでもいうのでしょうか。システムによって量産できるなにかとは明らかに違う、ディテールのある質感、それでいて劇的な主張など必要とせず平和な風景の中にしっくりおさまることのできるこの落ち着き。人間には大地に根ざしながらやっていける可能性がたしかにある、そう感じさせるなにかがあります。
Yさまはこの写真を添付したメールに「春呼ぶニット」と題しておられますが、ギリシア神話において、人間に「火」を教え知恵と文化を授けてくれたのはプロメテウスでした。このプロメテウスは、英文学においては Prometheus the fire-bringer もしくは the fire-giver と呼ばれますが、これになぞらえれば このベストは Vest the Spring-bringer ということになります。
地を焼き風を焦がすものとしての火ではなく、大地に根ざして暮らすものを包み、照らす暖かみとしての火が、形になったようなベストです。
自分で買ったのでよく覚えていますが、ただのぐるぐる巻きの糸だったのに。あれが数本の棒を使うだけでこうなるとは。すばらしき手の技に感服です。
幸いにして、vest は四文字なので、Yさまのおとりくださった労への感謝と、手芸礼賛の念をこめて「春呼ぶニット」の四行詩をまとめることでむすびとしましょう。

Vermillion passion out of sight.
Eternal Love, let fall your might?
Stand fast. If winter has arrived,
'Tis natural, spring's not far behind.

(韻律は弱い音節を w、強いのを s と表記すれば wswswsws が4行)

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手芸のたしなみをお持ちの方で、まだボランティアニットをご存じない方は、下にあるリンク先の詳細ページを一度覗いてみてください。2010年の募集は終わりましたが、来年もまたあるはずですので。
募集主体によってセーター、マフラー、帽子など、募集作品の種類が違ってくるようです。

ボランティアニットの詳細:

日本編物文化協会のサイト
 http://www.nac-web.org/event-01-volun.html

手づくりタウン(日本ヴォーグ社のサイト)
 http://www.tezukuritown.com/smile/index.html

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